きょうの忘備録

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『天国と地獄~サイコな2人~』総合評価:~善意と愛で構成された素敵な物語と悪意的な伏線のドラマ~

『天国と地獄~サイコな2人~』

 

全話の見返しを終了して、この作品の感想を落としたいと思います。

 

 

◆一通り作品を見て

この作品を一通り見た評価ですが、タイトルにつけた通り

『善意と愛で構成された素敵な物語』『悪意的なブラフ伏線のドラマ』の2点が最初に感じた事でした。

 

この物語はどんな物語だったのか、それは最後まで見ればすべてわかります。

そしてそれを理解した上でドラマを見ると、全てが一貫性のある『善意と愛で構成された物語』でありました。

 

そして、私はこのまっすぐな物語に引き込まれ、これがとっても愛おしくて大好きでした。

 

◆悪意的なまでの伏線の山 

ですが、このドラマを見る際に『視聴者を引き付けるための無駄なブラフ』が多すぎて引っかかりとなり、後半になるまでずっとこの素晴らしい筈の物語を私が素直に楽しめなかった事も事実です。

無論、エンターテインメントとして「ブラフで騙し、意外性で驚かせる」事も大切な要素のひとつであるという事は存じ上げています。

ですがこの作品のブラフ=『真相を隠し、虚実へ誘導するための伏線』の量は正直悪意的と感じ取るラインを超えており、『視聴者を引き込むために虚実へ誘導する伏線を物語に仕込むよう』指示をした人物こそが悪かもしれない、と思ってしまうレベルでした。

(7話時点でそれまでの時間に対する伏線の回収量から判断して、どのような方向の考察をしても残3話での伏線回収不可能を薄々感じておりました)

  

この物語を最終話まで見た時、私は、リアルタイムで視聴している間に、もっとこの『まっすぐで素敵な物語』を素直に楽しむ時間が欲しかったと感じました。

ずっとずっとこのドラマは一貫してこんなにもまっすぐで素敵な物語だったのに、後半に至るまでずっとブラフ伏線に踊らされて『無数の悪意で飾られた残酷な物語』として見てしまっていた事実に切なくなりました。

『エンターテインメント』を名乗るなら、エンターテインメントを愛せる時間をもう少し与えてほしかったな、と。

せめて、『嘘へ誘導する伏線の数を絞る』か『嘘を信じる時間を減らす』か、もう少しどちらかをして頂けたのであればなあ、なんて感じ取りました。

 

………まあ、そんな事を言っても受け取り手の思い方は十人十色。

作品とは、送り手が作り贈ったものが全てです。

 

まんまと送り手が放ったブラフという凶刃にかかった私は「兄さん」と言った日高の言葉に血反吐を吐くことになりましたよええ。(唐突なボヤキ)

※日高と東が入れ替わったというブラフにすっかり騙されておりましてね(´・ω・`)

 

そんな悪意に絡め取られた何十時間に渡る考察時間も、楽しかったかと問われれば楽しかった時間と換算して差し支えないでしょう。大半は無駄になってしまいましたが、考察とはちぎってはすて、ちぎってはすてるもの(人狼PLの経験則)。

事実、「こういう作品もあるのだ」と知る事ができたのは私にとって大変な収穫でございました。

 

※そんな伏線にも、メリットはあったと言って差し支えないでしょう。

今作の視聴率は最近の作品の中で良い方であったとの事ですが、その理由の一つとして「無数の伏線で真相がわからないドキドキ」が作用していた点は否めません。「また次回も見なければ」という欲求を持たせるには十分な役割を果たしていたと思います。

結果的に、その伏線から真相を考えたかった人たちは苦労をしていた分だけ作品から突き放されてしまったというデメリットがありましたが。

この伏線の山も、作品の成功のためには必要だったのかもしれませんね。

 

◆演技について

また、この作品を語るに欠かせないのは出演している俳優さんの演技力でしょう。

Twitterでも少し語りましたが、この作品は出演者の演技力で評価が大きく左右される作品でもありました。

幾層にも重なる物語構造の中で主体の『入れ替わり』は、2人分の人物像を演じ分けしないといけない難易度の高い演技です。

綾瀬さんと高橋さんの2人は、男女の入れ替わりという設定に違和感を感じないように丁寧に演技されていた事がインタビューで述べられていますが、大変素晴らしいものでした。

全話を見返しても「中身」で所作や表情に一貫性を持たせている事がよくわかり、「癖」というわかりやすい部分抜きにして「人が変わった」と理解できる点がとても良かったです。

 

また、最終話の取り調べのシーンは台詞の多い長丁場でしたが、3名のやりとりが素晴らしく、大変入り込んで目が離せませんでした。

東、陸、八巻、幅の4人も各人の役柄にとても合っておりかつ絶妙な表情も魅せて頂けて楽しめましたし、他の方も誰一人として違和感のある方がいなかった事が本作の魅力的な内容を色付けしていたと言えるでしょう。

 

◆エンターテインメント性

テンポよく展開される、スリルのある盛り上がりシーンとコメディで気を抜けるシーンのメリハリがとても良かったと思います。

また、この物語の印象として、「不要なものは描写しない」というものが挙げられるかな、と感じました。

それは「日高・東以外の人間の細かい生い立ちや友人関係」「殺人を行う瞬間」などが該当します。

特に日高・東以外の人間の細かい生い立ちや友人関係に触れない事は徹底しており、「作中で必要な登場人物及び最低限の要素以外」は物語には一切触れられませんでした。

この作品では殺人が行われる瞬間そのものは一度も映らなかった事も含めて、「エンターテインメントとして」必要なものを集中して描いていたのかな、と思わされました。

 

◆シナリオ構成

表向きはミステリーに見せかけた、「日高陽斗のヒューマンドラマ」であったと思います。そして、それは制作者によって意図して仕組まれていたものであると感じました。

作中で全ての人物が事件を追いかけてはいますが、実は作中で『事件の詳細』という真相はあまり究明されていません。

実際に開示された情報は、物語上必要だった日高が清掃を行ったという事実に関連したものの一部のみです。

では作中では何を究明していたのか。

作品を通して解明される真相は徹底して「日高・東の生い立ちと人物像」に関するもので、『日高陽斗という人物は何故こうなった』という事実が並んでいます。

作中ではこれを解明するために3人の探偵役が各方向から真実を探求する形となっていました。

望月は日高の内側から真相を探し、

河原は物語の外側から日高と東の事実を暴き、

陸は東の傍で彼の物語を聞き届けました。

入れ替わりも含め、これらの複雑な要素が編み込まれた複雑な構成を成立させた脚本は本当に素晴らしいと思いました。

 

◆総評

『大変緻密に作り込みがされた、愛に溢れた素敵なドラマ』

(ブラフと言う瑕はありましたが。)

という感想が今回の総評となります。

 

観ていて大変引き込まれる、素敵な作品でした。

私にとって人生の半分ぶりくらいに観たドラマがこれで良かったと心から思っています。

この作品は、自分が本当にドラマが大好きである事を思い出させてくれました。

 

◆あとがき 

今回の記事で、天国と地獄の連続記事はラストになると思います。

長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。

心から天国と地獄の続編を希望しておりますが、物語に綺麗に折り合いが付いているので難しいのかもなあ、とも思っています。それでも、楽しみにしておきますね!

 

このドラマがとても面白かったので、今は綾瀬さんの出演されていた作品を中心に色々なドラマを拝見しています。

人生でこれからもたくさんの楽しいドラマに出会える事が幸せですね。